地方には地方の教育の良さがある

米田 若菜さん
徳島 → 京都 → 大阪 → いわき → 楢葉町
徳島県阿南市で高校時代までを過ごす。京都の大学を卒業後は大阪の社会人向け研修等を手掛ける会社に就職。その後、どんな環境に生まれ育っても未来をつくりだす力を育める社会を目指す認定NPO法人カタリバに転職し、広野町にあるふたば未来学園内の拠点に配属。現在は楢葉町に住みながら、高校生の地域探究活動のサポート等に取り組む。

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徳島県阿南市で生まれ育った米田さんは高校時代から地元で教員になることを目指していました。進学した京都の大学で教職課程を取りながら、文学の研究をしている中でひとつの考えにたどり着きました。「京都は徳島より都会なこともあり、普段の生活で得られる情報量が多いと実感していました。また、同級生など周囲の人の出身地がバラバラなので、バックグラウンドもまったく違います。そこで初めて、住む場所によって学びの環境に格差があるのではないかと気づきました。」
そんな考えから、このまま地元に戻って教員になってもよいのだろうかという疑問を抱くようになり、教職課程も残り2単位というところで辞める決心をしました。そして、一般の就職活動に切り替え大阪の一般企業へと入社。 入社から約2年半後に始めた転職活動でたどり着いたのが認定NPO法人カタリバでした。住んでいる地域による教育差に対して疑問を感じていた米田さんにとって、カタリバは地方で教育にコミットできる格好の職場でした。

地域に開かれた学校という場で生徒の変化を見てみたい、ここで修業したら自分自身の可能性がより広がりそう、そうしたワクワク感を抱きカタリバへと転職を決めました。

地方の出身だったということもあり、生活をする上での不便さは少ないと言いますが、今まで住んでいた町では見ない光景に驚くこともあります。
例えばテレビの天気予報です。福島県内で流れるテレビの天気予報の後には、県内各地の放射線量が公表されることがあります。これまで住んできた場所では触れることのなかった情報に新鮮さを覚えるとともに、福島の現状に向き合うことで自分自身の考えを問い直すきっかけになることもあると語ります。

散歩することが好きな米田さんは、よく家の近所を散歩するそうです。
山と海が近いこともあり、起伏のある道が多い楢葉での散歩は楽しいと言います。散歩途中に見つける大きな家屋や太い木を見ると自然にテンションが上がるそうです。

また、楢葉で過ごす日数を重ねるにつれて近隣の方々と顔を合わせて挨拶を交わすことが多くなってきました。地元徳島にいた時には当たり前にしていたけど、京都やいわきのアパートではできなかったまちの暮らしを楽しむ感覚に喜びを感じています。顔が見える関係性が増えていくことで、まちに愛着を持てる要素がどんどん増しています。

現在、米田さんはふたば未来学園中学・高校内にある双葉みらいラボというスペースで中高生を対象に仕事をしています。親や教師のようなタテの関係ではなく、同級生のようにヨコでもない米田さんと中高生はいわばナナメの関係。そんな関係性だからこそ話せることがあるのではないかと考えています。
「些細でも、その人にとって大切な言葉は大切にしていきたい」時には生徒のバックボーンや情景に触れることもあるため、意識していると言います。生徒の成長を見ることができるのは醍醐味のひとつだと語ります。

職場のあるふたば未来学園、そして働いている双葉みらいラボは地域に開かれた学校です。そこで大切な要素は地域の大人だと語ります。「都会は情報や楽しめる場が多いという良さがあると思います。一方で、地方には周りの大人との距離が近くて地域で起こっていることに目を向けやすいという良さがあります。近い距離感だからこそ、自分自身と同じ方向を向く大人の存在にも気が付けるし、“こういう大人になりたい!”が育ちやすいという良さがあると実感します」

そうした地域の大人に支えられながら、この土地や伝統、文化、空気に触れて浸って欲しいと話します。米田さん自身も、この土地にあるものにもっと触れていきたいと言います。「町民の方々から地域の伝承・歴史のお話や思い出の話など色々な方からお話を聴くことで、まちを見る視点をどんどん増やしていきたい。まちに対する学びを深めていくことで、楢葉での暮らしを楽しみたい」
地方の教育の良さを肌身を持って体感しながら、自分自身のここでしか得られない生活も大切に過ごしていきたいと語ります。

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